Sculptor Eiji Nitahara

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そして私の歩み

1.造形言語の意識:造形はその作家固有の造形言語によって模索され形成されていく。それは思索しながら文脈を紡ぎ、一体の存在に完結するのを念ずる行為に他ならない:私自身について言えば、イタリア半島を縦走する山岳地帯の頂きに散在する街や邑との出会いが、己が語るべき造形言語の原素材になり得るだろうと覚醒させた。そこに世代を重ね重層する時間の蓄積の中から生成されてくる強靭な生命営為の言葉と文脈を汲み取ったからである。
2.古代ギリシャ芸術との出会い:(イタリア半島、シチリア島、アテナイ、デルフォイ、オリンピア、ぺロポネソス半島)・【Paestum, Segesta, Atenai、Delphoi, Olimpia, Peroponesos半島 他】:
―ギリシャ・アルカイック期から所謂「厳格様式」:
   1.ぺプロスのコレ(少女):BC540-530、118CM、大理石、彩色
   2.クロイソスの墓像:BC520、194CM、大理石、彩色
   3.ピレウスのアポロン:BC520―500、192CM、ブロンズ像
 
   注目したいのはこれ等の彫像がすべて直立の姿勢で立っていることである
(*これらアルカイック期の彫刻は礼拝の対象、奉納像、つまり直接、間接に宗教(神)に奉仕する美術である。裸体表現の動機と根拠は神々に捧げられる男性全裸による祭典競技に由来するものであり、・・・「完璧に均整のとれた肉体と精神の一致」こそが神々の喜ぶものであり、その彫像に神々は宿ると考えた。
彫像は「善にして美」・カロスカガトスの姿であらねばならなかった)。
 
――クラシック時代を代表する「デルフォイの御者」:(BC470、180CM、ブロンズ像)も、その神に捧げる代表的な彫像である。
――Riaceの「英雄像」:1972年イタリア半島南端のRiaceの海底で発見されたブロンズ像。修復に9年をかけ現在Reggio Calabriaの国立博物館所蔵となっている。ギリシャ古典期の作。
――ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの青銅騎馬像:古代ローマ五賢帝アウレリウスは文武によって古代ローマに君臨するが、戦争を嫌悪したストア派(創始者・キプロスの哲学者ゼノン。ストアはアテナイの講堂を指す)の哲学者であった(ストイック)。ミケランジェロの設計になるローマ・カンピドーリオの広場に立つ4メートル余の青銅騎馬像は壮大と云う外ない!
 
   最後に私は「古代ギリシャの造形芸術の根幹を一貫して流れるものは神殿建築の柱そのものであり、「神殿の柱は不動にして神聖に立つ人間の姿であった」、という認識である。*アテナイ・アクロポリスに建つ「エレクテイオン」(アテナイの王、エレキテウスの家)は複数の女人柱・ペプロスの乙女に支えられている」。
更に、もうひとつ:それは生の歓びと死者への弔いに関わった陶器:ギリシャ・アルカイック期の陶器の均整美と陶器絵の文様の連続が奏でる音楽的律動、それは美しい生命の流れとなり古代ギリシャ芸術の全てにメビウスの環をなして調和と輪廻の叙事詩を奏でている。古代の彼らは人間の運命=生と死を神々を交えた叙事詩にまで止揚したのだ。ギリシャの文化は神々が人間の生と死に深く関わった文化である。・・・・【私は、その全てが奏でる音楽に耳を傾けながらCalonologicaの世界に入っていく。
 
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3.  広隆寺、竜安寺、金閣寺で体験したこと:彫刻、庭園、建築との出会い:
   1968年夏、イタリア滞在8年を経た頃、ひと月ほど帰国の機会があって京都を訪れた。暑い
真夏の一日だった。
  1.広隆寺、国宝・弥勒菩薩半跏像との初めての出会い、それは余りにも衝撃的であった。:恐らく世界に比類のない木彫仏の示す仏教世界の深淵と美に魂の底まで洗われ、いずれ祖国の伝統文化に回帰しなければとの熱い想いで一杯だった。
  2.竜安寺は造園の妙、それは謂わば非条理の理、非条理の美、静寂を呼吸する美の世界の存在を暗喩していた。それは融通無碍に呼吸する生の実相への悟入を黙示していた。
  3.金閣寺は四季の夢幻の自然を映して移ろう建築の妙、金閣寺は池面に金色の華となり水鳥となり空からの光を受けて佇む。それは自然と共に終わることなく変容する不動の調和。
  
(この豊穣な自然が育んできた文化の歩みを省みる時、この国に生を享けた私は目眩めく喜びと
無限の可能性を感じる)
 
   私は今、自分がこれまで辿って来た造形の営みの彼方に、三つの言葉、「非連続の連続」、
「非条理の理」、「非条理の美」を夜空の星々を見上げるように見ている。そして斑鳩の里にたおやかに立ち幽かに微笑む百済観音の姿を想い浮かべる。
 
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彫刻家二田原英二公式ホームページ